The Cuckoo's Nest

幽遊自躑に暮らしております。https://twitter.com/Wintermoth1934

こんな夢を見た

子供の頃から知っていた店がついに潰れた。

別に町の象徴とまではいかないが、あの町に住んでるみんながその店を知っていた。

店は看板が独特でおもしろく実に目を引き、その知名度の高さは立地の良さとその看板にあった。

ずっと同じ看板を掲げて私が産まれる以前から店はそこあったらしいがついに潰れてしまった。

そのことを知った時、客の入りが如何にも悪かったし潰れたことは致し方ないと思ったが、同時にもう一度行っておけば良かったなとも思った。

幼少の時分、父に連れられて一度だけその店へ足を運び双眼鏡を買ってもらったことがある。その双眼鏡はバードウォッチング用に買ったもので今も私の手元にある。

 

そして今日、こんな夢を見た。

私はもうその店がなくなることを知っていて、最後に何か思い出が欲しいという想いを持ち店の前にいた。私の他に父と知らないおじさんがいた。その人を私は父の知り合いと漠然と認識している。

時間は夕刻、店の前には在庫処分のために設置された福引のガラガラがあった。もうそこに店員はおらず、明るいうちはやっていたようだった。

それを見て、いよいよこの店は本当になくなるんだという思いが強まった。

中に入ると様々なものが売られていた。こんなリサイクルショップみたいな店だったかしらと思いながら回る。店内には至る所に全品◯割引と書かれた張り紙が掲げられている。

ボロのネクタイが大量に売られていたので掘り出し物がないか探る。60年代のネクタイが何本かあり、これを思い出にしようと選ぶ。早くしろと相変わらず急かしてくる父にうんざりする。一人で来れば良かったと思うが、今日でここに来られるのは最後だと何故か確信めいた気持ちがある。やや急ぎ足で選んだのは、裏に昭和37年だかとペンで書かれたネクタイ。ハッキリそう記されていれば間違いなく当時のものだと思い、それにする。

本の置かれたコーナーへ移動する。隣に同行の知らないおじさんがやって来る。彼は一冊の釣り雑誌を手に取る。雑誌はつり人だろうか、新しそうだが、その号の特集はテンカラとなっている。私が過去にテンカラをやっていたことをおじさんに話すと、その人が俺はしたことないな、と呟く。

 

夢はそこで終わる。

結局あの双眼鏡を買ったのが最初で最後になった。夢の中だけど、もう一度あの店に入れて良かった。