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酒を飲む度に気付くことがある。それは酒を飲みアルコールの効能で精神を紛らわして関わるいつも自分を不安にする人たちが全く普段と変わらぬ、いや、そればかりか普段より良い人たちであるという点だ。誤解しないで欲しい。普段より良い人たちに映るのは、ただアルコールの精神を高揚させる効能故ではない。肝心なのは彼らが実際に私が考えていたような恐ろしい人間では決してないという点なのだ。これはアルコールを摂取することで逆説的に導き出せた結果である。
故に私がアルコールを摂取せずに関わる人たちが発する私への悪意や恐怖はそれこそ架空ではないか、と思うのだ。こんな馬鹿げた話があるか。私はそれを知りながら酒を呑む。「それ」を知っているのにだ!
こんな皮肉はないよ。私という人間の最期に相応しい、そんな露悪的とも言えるムードがここにはある。本当に死にたいんだ。私は良い人ではない。だから死ぬのではない。良い人と自分をどうしても思えないこの脳髄を呪って死ぬのだ。
数多の説教が聴こえる。数多の神の尊い鐘の音が聴こえる。私はもうその鐘の音がこだまするのを何度も聴いてきた。この鐘の音は安心、安寧ではなく今の私には悪魔の誘惑なのが現状だ。私は西洋で言うところの悪魔に取り憑かれてる状態なのだ。私は「忍耐」という言葉にだけ疲れた。
父
夜更けに眠れず布団へ入ってると父の部屋の戸が開く音がしてあゝトイレに行くのだなと思う。父が夜目を覚まし用を足しに行くのは稀だ。そうあることでは無い。
私はこの瞬間に思う。家族のために自らのかけがえの無い人生を削り続ける父の献身的な姿を。その父がトイレへ行くために目を覚まし戸を開け用を足しレバーを引き洗浄の音が一夜の静寂を破り戸を閉め廊下を歩き再び布団に潜り込み安らかな眠りに着く。その一挙動の美しさたるや。そして数時間の眠りを経てまた朝日が昇りアラームの音で目を覚まし朝食を食べ時間通りに毎日の極めて価格と言える労働へ向かう。
私はこれほどの美しいものはこの世界にそう無いとすら思う。教会の鐘が鳴り響くのを感ずる。エゴを追求すれば人はこれ程の苦労をせずに生涯を終えることができるはずだ。だが父はそれをしなかった。父がそれを拒否したのは単に我が国の、いや、この世界のくだらぬ慣習のためか? 一般的な取るに足らない常識のためであろうか。いや、それだけはあり得ない。人はそんな簡単では無い。私はそれを知る時にじんわりとした緩やかな感動にその身を浸す。
父からは本当に素晴らしく感謝や尊敬という言葉では言い表せない神々に抱擁される人の持つ可能性とも言うべきか美徳のようなものを一身に感じるのだ。私の父は美しく神聖だ。これを誰にも決して否定させない。そして私にはその父の血が、生物学な血が、少なからず確実に混ざっているのだ。天の父が私のすぐ隣にいる。毎日会話しその精神を投げかけて貰える。その栄光と幸福と安心とは言葉では言い表せない。
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私は酒を飲む。呑むのではない飲むのだ。
私は酷く醜くそして愚かだ。
悪魔の印
全てはお前次第で良くも悪くもなるなんて言葉はクソだね。よくもこんな馬鹿なことが言えると感心するよ。
最悪な事態に直面した時これは実際のところ山で小鳥を眺めていたり洗濯物を畳んでいる時と同じではないかと思うことはある。ただ実験的に一瞬思うだけで俺が苦痛を抱くこの瞬間は決して変わらないし最悪でクソな現実はそのままだ。
つまり何が言いたいかと言うと、できないものはできないし、そんな鍛錬に修行を積み不可能を可能に変えた高僧でもない市井の馬鹿が実際はできてなどいないのに自分はできてると勘違いしその暴力的な言葉を振るう。こんな人の心を侵害し失礼かつ卑劣なことはあるか? いや、ないだろうね。そんなこたぁ俺もできないしお前もできてる訳がない。何故なら俺たちは普通の世界で生きる普通の人間だからだ。
唯一真実があるとすればこの手のバカは時折の不幸に直面しようと少なくともこの俺よりはずっと前向きに人生を謳歌している点だ。なぜ自身の愚かさを自覚せず毎日をポジティブに生きれる?
本人が例え勘違いだとしてもポジティブに生きていれば本人は良いだろうが、それに付き合わされる周囲は地獄だ。そいつの存在そのものが害なんだよ。無知と忘却はこの現実に咲く唯一の花だ。それらは最大の悪徳の一つだ。
バカ
私「お願いです。私はマトモになりたいんです。そのための努力をしたいのです。これまで散々虚勢を張って生きてきました。しかし本当はマトモに生きたいのです。私と一緒にいる人が私といることで幸福に感じるような、そんな人になることを夢見ているのです。どうかお願いです。チャンスを、きっかけをお与え下さい。お願い致します。私は変わりたいのです」
???「きっかけなら既に与えている。お前は望むものを既に手にしている」
私「なんと! 私はそのきっかけを無碍にしているのですね? そんな愚かな私はもう生きる価値などありません。私は世界で最も醜いのです! 何て私は悪辣非道な生物なのでしょう!」
???「余の言葉を耳にして尚そのように思う事こそが罪なのだ。それが貴君の最大の罪だ。貴君が死を希求すべきとしたら要因はその一点に限るのだ」
私「栄光に満ち溢れたあなた様がそのように仰るのであればやはり私は万死に値するこの世の最も重い罪を背負った人間なのですね! お陰様で未練なく死ぬことができます。誠に感謝いたします!」
???はこの者を見て深い深い溜息を一つついた。
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人は死後の転生はあるが、生きている時の転生はない。