ただあの日に帰りたい。
カジカやドジョウを追って川辺を自転車で渡り歩いたあの頃へ。夢中で遊びいつの間にか時が経ち町は夕闇に包まれる、母に叱られぬようそれほど食べたくもない夕食を目指して帰宅したあの日……
私の望みはただそれだけなのだ。そう難しい願いではない筈だ。が、その望みは永久に絶たれた。
今や夢の中にしかあの時間はない。
死後もしも天国があるとするなら、天国は人それぞれ異なる様相を呈する筈だ。私の天国はきっと、私の関わってきた人が憎む人も含めて皆終始笑顔で、私と親しく話してくれて、いつでもカジカとドジョウに夢中になれるそのような場だろう。