一周忌の墓参りを終えた帰り
突然クシャッと足元で何かが爆ぜた
靴を上げると大きな沢蟹が潰れていた
横には小さな水路が流れていたのでそこに居着いていたのか
屈み込み蟹を見つめて1か0か考える
蟹は0であった
私が殺したのか、それとも死んでいたのか
崩れた殻から漏れ出す液体は生々しく
仮に死んでいたにしても時は経ってない
しかし生きたカニなら避ける程度のこと造作もない筈
いや、それは私の思い違いか
彼らは私達が思ってる以上に間抜けかも分からないぞ
私は明後日の方向を向いた蟹の手足を指でつついたり引っ張ったりし反応を見た
すると蟹の指が微かに動いた気がした
いや、ただ物理学の問題で生じただけのものか
母が私を呼ぶ
私は母の背に向かって走る
駆けながら私は分かった
私の考えるべきことは、あの蟹をどこに埋葬してやるのが幸いであったか
唯その一つだけだったのだ
蟹のある方を振り返ったが
私は再び蟹の元へ戻らなかった